今回のセミナーは「素材の探索から商品化」と題し、「サントリーにおける機能性食品開発の取組み」と「産業技術総合研究所 北海道センターにおける『生物の力によるモノづくり』研究」というテーマで、2名の講師をお招きして具体的事例をもとに行われた。
参加者は約80名、当日用意した席はほぼ満席となり、皆積極的にメモを取りながら熱心に講演に聞き入るなど各企業の関心の高さが伺われた。
講演1では、サントリー株式会社 健康科学研究所 部長 柴田浩志氏より、「サントリーにおける機能性食品開発の取組み―特保『黒烏龍茶』の開発研究―」というテーマで、ゴマ「セサミン」の機能性と特定保健用食品である「黒烏龍茶」の研究・開発について、その経緯・コンセプトが述べられた。
セサミンの販売においては、商品の良さ・特徴を消費者1人ひとりに対して丁寧に説明が可能なビジネスモデル(=通信販売事業:One to One)を確立し売上を伸ばしてきたこと、そして黒烏龍茶の開発においては、烏龍茶が消費者に広く知れわたり陳腐化してきた中で、再度、消費者に烏龍茶の良さを訴求していくために、商品のコンセプト・エビデンスをダイレクトに伝えることのできる手段として特保の認証を得ることを採用した経緯が述べられた。
そういった事例を通して、企業として大切なことは、当然ながら消費者の信頼を得ることであり、その信頼を得ていくには消費者が強く信じることのできるサイエンス・テクノロジー・クオリティーを含めた科学的に証明されたエビデンスをいかに備えていくかである。従ってR&Dはメーカーにとっての生命線であるということを強く述べられた。
講演2では、独立行政法人 産業技術総合研究所北海道センター所長 北野邦尋氏より、「産総研 北海道センターにおける『生物の力によるモノづくり』研究」というテーマで、産総研北海道センターの事業・組織・研究内容について述べられた。産総研北海道センターの組織は主にゲノムファクトリー研究部門と創薬シーズ探索研究ラボ、加えてメタンハイドレード研究ラボ等で構成されており、産総研がライフサイエンス分野第2期戦略目標を掲げているなかで、北海道センターの目的は「機能性を活用した生産プロセスによる効率的なバイオ製品生産技術」の開発にある。
ゲノムファクトリー研究部門における主な研究課題は、遺伝子組換え植物・微生物等による有用物質生産技術やタンパク質・核酸の利用技術の開発であり、目指すところは産業利用を明確に意識した研究を行うということで、それらの現状について、完全密閉型遺伝子組み換え植物工場施設の開発やジャガイモの水耕栽培技術といった具体的研究事例をあげ紹介された。
最後に、北野氏は産総研北海道センターの研究内容・成果が、企業と協働のもと北海道の新たな産業の創造に寄与できることを切に願っており、そのツールのひとつとして、多くの方にR&Bパーク札幌大通サテライトを活用して欲しいと述べられた。
その他においては、休憩時間を利用して、株式会社サンプルプラザ札幌の社長 森成市氏より今春札幌市内中心にオープンを予定しているサンプルプラザについての説明があった。サンプルプラザとは東京で好評を得たサンプルラボの札幌版で、同プラザを活用することによりサンプルによる販売促進・新製品の市場調査が行えるなど、今後商品開発の一助になるものと思われる。